オレゴン州立大学では、「猫と認知」に関する研究をしています。科学的な実験によって、猫に関して判明した7つのことの概要をご紹介します。
1.猫は思ったよりも社交的な動物
猫は孤立した生活を送ると一般的に考えられてきましたが、実際には猫同士や人間とのコミュニケーションを求める行動が見られることが明らかになりました。
研究によると、猫は社交的な動物であり、同じ家庭や地域の他の猫とコミュニケーションを取ることでストレスを軽減し、心理的な健康を維持することが示唆されています。また、猫は飼い主との関係を築き、彼らとの触れ合いやコミュニケーションを楽しむことで、幸福感や安定感を得ることができるとされています。
この研究結果は、猫の行動や性格に関する一般的な認識を見直す重要な示唆を提供しています。猫を飼う際には、十分な社会的環境や愛情を提供することが重要であり、猫が健康で幸せな生活を送るための基盤となります。
2.猫はちゃんと人間の気持ちを読んでいる
猫は気ままなイメージが強いが、ちゃんと人間と社会的なきずなを結んでいる。ある研究によれば、飼い主の感情によって猫が微妙に行動を変えることが分かっています。
飼い主が落ち込んでいるときは、普段よりも人間に頭をこすりつける行動が多くなる。
人間と猫の関係は古くから親密であり、猫が飼い主の感情を読み取り、それに応じて行動することが観察されてきました。オレゴン大学の研究では、猫の脳内で特定の領域が活性化され、飼い主の感情を理解するための情報処理が行われていることが示されました。
この研究結果は、猫が人間の気持ちを読み取る能力を持っている可能性を示唆しています。例えば、飼い主が悲しんでいるときには寄り添ったり、安心させる行動(普段よりも人間に頭をこすりつける)を取ることが多いとされています。
また、猫は飼い主の気分や状態に敏感で、飼い主の行動や姿勢から感情を推測することができるとされています。
3.猫は数をかぞえることができる
実験によれば、猫には2つの点と3つの点の区別をつける能力があることがわかりました。猫は少なくとも小さな数の判断はできるようです。
従来、猫は数をかぞえることができるとは考えられていませんでした。しかし、最近の研究では、猫が食事や遊びの回数などの日常的な活動を数えることができる可能性が示唆されています。この能力は、猫の行動パターンや学習能力の向上に関連していると考えられています。
具体的には、猫が定期的に行う活動に対して報酬を提供する実験を行った結果、猫が特定の回数の活動を行うことで報酬を期待するようになることが観察されました。これは、猫が活動の回数を数えることができ、それに基づいて行動を調整する能力を持っている可能性を示唆しています。
4.猫には時間の感覚がある
猫は、おおまかな体内時計は持っていて、短時間であれば時間の経過もわかるようです。
研究によると、猫は時間の経過を理解し、特定の時間に関連付けられた活動やイベントを予測する能力を持っています。例えば、飼い主が定期的に同じ時間に餌を与える場合、猫はその時間になると餌を求めてきたり、特定の場所で待っていたりすることがあります。
また、猫は昼夜のリズムを認識し、自然のサイクルに従って行動する傾向があります。日中は活動的になり、夜間は休息を取るという行動パターンが観察されます。これは、猫が自然の時間の変化に適応し、生活リズムを調整する能力を持っていることを示しています。
さらに、猫は飼い主の帰宅時間を覚え、その時間になると待ちきれずに玄関で出迎えることがあります。これは、猫が時間の経過を把握し、飼い主との交流を楽しみにしていると言えるでしょう。
5.猫にも「対象の永続性」の能力がある
例えば、ボールが転がって箱の裏に隠れたとしても、ボールはまだ「存在している」と認識できる能力のことを「対象の永続性」といいます。猫は再びボールが現れると思い、現れるのを待ち続けることがあります。
人間の場合、生後9~12ヶ月あたりでこの能力が出てくると言われています。猫にもこの能力があることが判明しました。
この能力は、猫が自分の周囲の環境を把握し、適切に行動するために重要です。例えば、猫が餌を隠し場所に隠した場合、その場所を覚えておき、必要な時に行きつけることができます。
さらに、この能力は、猫が飼い主との関係を築く上でも重要です。飼い主が一時的に姿を消したり、一時的に家を離れたりしても、猫はその存在を認識し、再会を喜びます。これは、猫が飼い主との絆を感じ、その存在を大切に思っている証拠と言えるでしょう。
6.猫は原因と結果の関係を理解してない可能性がある
猫は原因と結果の関係を理解していない可能性があるという議論は、一部の研究者や猫の飼い主の間で支持されています。これは、猫の行動や反応に関する観察から導かれたものです。例えば、飼い主が猫に何かを教えようとするとき、猫は飼い主の指示に応じることがありますが、その行動が特定の結果をもたらす原因を理解しているかどうかは不明です。
オレゴン大学の研究チームによると、猫の脳内の特定の領域が他の動物に比べて発達していない可能性があります。これにより、猫の原因と結果の関係を理解する能力が低いと考えられています。また、猫の行動パターンや認知プロセスが他の動物と異なることも、この説を支持する要因の1つです。
一方で、この能力の欠如は猫が知能が低いということを意味するわけではありません。猫は独立した生物であり、自身の行動を選択し、環境に適応するためのさまざまな戦略を持っています。また、猫は特定の条件下で学習し、行動を修正することができることが知られています。
7.猫にも認知症は起きる
人間と同じように、年齢とともに猫の認知機能も低下します。世界的に猫の寿命が長くなったせいで、認知症の発症率も高まっています。
猫に認知症が発生するメカニズムは、人間と同様に複雑です。認知症は、脳の変化や神経の損傷によって引き起こされます。猫の場合、加齢や疾患、脳の病気などが認知症のリスク要因とされています。
認知症の症状は、猫によって異なることがありますが、一般的な徴候には次のようなものがあります。
- 記憶力の低下
- 孤立や不安の増加
- 環境への適応の難しさ
- 適切な反応の喪失
- 睡眠障害や行動の変化
これらの症状は、飼い主が猫の行動を注意深く観察することで早期に気付くことができます。